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素人ながら美術展によく行くようになって最近、美術品の作者は伝統的なスタイルを
継承する、深く追求する人と、自己の確固たる技量と美意識を以て新しいスタイルを確
立する人にタイプが分かれるのではないかと思うようになりました。
今回観てきた展示は、まさしく後者の展示になると思います。
ちょっと更新が遅くなりすみません。
2月の風の強いある日に行ってきました。
国立博物館平成館で現在開催中の特別展「本阿弥光悦の大宇宙展」に。
チケットは早いうちに手に入れていたのですが、なかなか行くタイミングが合わ
ず・・・なんとか2月中に行くことができました。
本阿弥光悦(1558-1637)は安土桃山時代に足利幕府に代々使える刀の研磨や鑑定を
する一族の出で、光悦自身は刀の鑑定以外にも書や漆工芸、謡本の装丁、陶芸など多才
な活動をする文化人です。
今回は沢山の展示品から印象に残ったものを中心に感想を述べていきたいと思います。
展示の入り口には国宝の「舟橋蒔絵硯箱」↓ が展示されていて驚きました。
和歌を題材にする蒔絵の硯箱はよく見かけますが、このデザインと形状は、当時の職人
の技術力と光悦のデザインと発想が光る作品ですよね。
展示内容は大きく分けて、1.本阿弥家の家職と法華信仰と、2.謡本と光悦蒔絵、3.光悦の筆線と学姿、そして4.光悦茶碗 の四つをテーマとする構成になっていました。
1.本阿弥家の家職と法華信仰では本阿弥家の家系図や文書に使用した印、鑑定した刀
剣、日蓮宗のお寺に寄進した扁額などが展示されていました。
その中でも、光悦の指料と言われる短刀「短刀 銘 兼氏 金象嵌 花形見」は引き込
まれるほど綺麗に研磨され、金象嵌も短刀に映えて美しかったです。
花形見というネーミングもいいですね。
その短刀を収める刀装(鞘など)も赤地に金の蒔絵の美しいもので武士の質実剛健な刀
装と違い艶やかなものでした。
光悦が日蓮宗の信仰が篤いことをうかがわせる資料が、日蓮が書いた「立正安国論」
を書き写したものなんですが、これが多分一文の中で楷書、行書、草書の順で書き進め
ているんですよ。
恐らく一回の筆に含ませる墨の量を考えての書き順なのかもしれないですが、墨が少な
くなる頃に草書の流麗な感じが出せるように計算しているのであれば、魅せ方を分かっ
た上でのことで・・・いやあ、そのセンスと技量ってやはりすごいです。
さて、2.謡本と光悦蒔絵では、「光悦本」呼ばれるスタイルを作り上げた謡曲のテキ
ストである謡本と光悦が手掛けた蒔絵を中心とした漆工芸品の展示になります。
このなかでは「光悦謡本 上製本」という謡本が表紙にやまと絵の絵柄を木版雲母摺り
で印刷し、題箋に光悦の書と俵屋宗達の挿絵が加わっているのですが、これがおしゃれ
で、敢えて大胆に柄を拡大したものを雲母刷りで印刷し、雲母が控えめにキラキラと光
る。そして題箋という小さい紙に山水画を描きその上に謡曲の題を記してある。
今見ても控えめな美しさがおしゃれに感じるし、題箋の小さな手書きの絵の一手間の拘
りも観ていて楽しい。そういう差配も光悦がしたのだろうと思います。
ちょっと長くなりそうなので、2回に分けたいと思います。
次回もよろしくお願いします。
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